境内整備とお寺の今について

境内整備とお寺の今について

お彼岸に向けて、大安禅寺では境内整備が始まっています。
夏の暑さが残る中、草はぐんぐん伸び、草刈りや剪定作業は副住職にとって重労働です。法務の合間を縫いながら作業にあたる日々が続いています。
寺院が抱えるとされる課題
そんな折、福井新聞の記者の方がお越しになり、「現在の寺院をめぐる課題」について取材を受けました。

取材テーマは、よく耳にする「墓じまい」「寺離れ」「担い手不足」「寺院の統廃合」といった問題でした。これらは社会的にも注目され、しばしばマイナスの出来事として報道されます。

しかし副住職は、これを単純に問題視するのではなく、「なるべくしてなっている時代の流れ」として受けとめています。
お寺はお寺だけで存在しているわけではありません。
家庭の形や社会のあり方の変化とともに、檀家との関係性もまた変わっていくのは自然なことです。

実際、大安禅寺では副住職が護持管理と法務を担い、住職は金沢で他の寺院を兼務しています。こうした形は、いまやどの宗派にも見られる現実です。

「担い手がいない」のではなく、「お寺の数が現代社会にそぐわなくなってきている」と言えるのかもしれません。

寺院の成り立ちもさまざまです。
藩主が建立した寺、疫病平癒の祈祷寺、村の事情で建てられた寺──地域や時代の背景によって多様な存在理由がありました。

だからこそ、その歴史や文化財を保存・記録し、次の世代に受け渡していくことが大切です。寺院の役割は、単に建物を維持するだけでなく、その精神と文化をいかに残していくかにあると考えています。
墓の在り方も時代に合わせて変化してきました。
樹木葬や庭園墓地など、新しい形が登場する一方で、従来の墓地も引き続き守られています。
「墓じまい」もまた、その一つの選択肢にすぎません。

大切なのは、どの形であっても「供養の心」が根づいていること。お盆やお彼岸に手を合わせる日本人の姿に、その思いは今も変わらず息づいています。

「墓じまい」「寺離れ」と聞くと問題のように映りますが、そこに関心が集まるということは、多くの方が真剣にお寺や供養の未来を考えている証拠でもあります。

今は、次代のお寺の姿へ移り変わる過渡期。
大切なのは、和尚と檀信徒の日頃の交流を通じて、共に支え合う関係を続けていくことです。

これから10年、その歩みの中で、新しい時代に合ったお寺のあり方が必ず形になっていくはずです。


副住職のお話を伺い、「墓じまい」や「寺離れ」は暗い話題ではなく、次代に向けた自然な流れなのだと気づかされました。

歴史を尊びつつ、現代に即した形で供養をつないでいく姿勢にハッとさせられます。
変わることは失うことではなく、新しい歩みを始めること──その考え方が、これからのお寺の道しるべになるのだと感じました。

まさに温故知新──古きを大切にしながら新たな形を生み出す営みそのものだと感じました。

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