心くすぐる春の音

「春風花自開(しゅんぷうにはなおのずからひらく)」
春風が吹けば、花は自然と咲いていきます。
ただそこにありのままに咲く花。
その姿から、現代の私たちが学ぶべきことが多くあるように感じるのは私だけでしょうか?
昨年は天候不順で、あらゆる作物が不作でした。ニュースでも度々農家の方のご苦労が報道され、「自然には勝てない」という農家の方の悲痛な思いに胸を痛めました。
大安禅寺でも彼岸花が一カ月近く遅く咲いたり、越前水仙も正月に間に合わない事態でした。自然のあり様に任せるしかありませんから、致し方ないことですが人間は勝手ばかり申します。
遅い早いと季節外れの花を価値無きもののように評価する。それはどこまでも人間のエゴでしかありません。
花はただ、時が来れば無心に咲き、時が来れば無心に散っていくだけです。驕ることも、悲観することもなく、ただ精一杯の私を咲かせているのです。
ここで「花は語らず」という南禅寺の管長を務められた柴山全慶老師の歌をご紹介します。
花は 黙って咲き 黙って散っていく そうして再び枝に帰らない
けれども その一時一処に この世のすべてを託している
一輪の花の声であり 一枝の花の真である
永遠にほろびぬ生命のよろこびが 悔なくそこに輝いている
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