進む修理準備

開基堂の濡れ縁解体準備

本堂の修理が無事に完成し、引っ越し準備も進むなか、
次なる修理工程として「開基堂」へとバトンが渡ります。

その第一歩として、現在は濡れ縁の解体作業が始まりました。
解体に先立って行われているのが「番付」と呼ばれる作業です。
これは、文化財修理において非常に重要な工程で、
一つひとつの木材や部材に番号(番付)を付け、
どの位置に、どのように使われていたかを正確に記録しておくためのもの。
修理後に再び元の場所へと戻すための“設計図”のような役割を果たします。
一方で、今日はもうひとつ大切な営みがありました。
大安禅寺の裏山にある歌人・橘曙覧(たちばなのあけみ)の奥墓と、その参道の掃除を行いました。

曙覧の墓は、松平家の廟所「千畳敷」の麓にあります。
最近では、天然痘の種痘に尽力された笠原白翁とあわせて、
この地を訪れお参りされる方が少しずつ増えており、
その遺徳を偲ぶ姿を見るたびに、胸の奥に温かいものが広がります。
静かな山中で、落ち葉を掃き、石段を清めながら、
「言葉と行いで人を励まし続けた先人たちの志」に改めて頭が下がる思いでした。
掃除とは形を整えるだけでなく、自らの心をととのえる時間でもあります。

大安禅寺 髙橋玄峰 合掌

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