よみがえる祈りの空間

修理を終えた本堂に宿る職人の技

この秋、10年におよぶ「令和の大修理」の大きな節目となる、大安禅寺本堂の修理が完了いたします。
福井市内唯一の国指定重要文化財である本堂は、長い歳月の中で損傷が進んでおりましたが、今回の修理を経て、まさに“祈りの場”としての姿を、静かにそして荘厳に取り戻しつつあります。
本堂内部に足を踏み入れた瞬間、目を奪われるのは、欄間や室中の扉——唐戸の見事な木彫装飾です。
江戸期の意匠を忠実に復原するため、熟練の職人たちが一つひとつ手作業で修復にあたりました。繊細な彫りの文様には、かつての美しさがよみがえり、時を越えた匠の技が息づいています。
また、壁面に貼られた越前和紙の紙壁も特筆すべき美しさです。
福井の伝統工芸である和紙は、自然な光を柔らかく受けとめ、堂内に穏やかな陰影をもたらします。手漉きならではの風合いと質感が、静けさの中に品格を添え、まるで呼吸しているかのような存在感を感じさせます。

そこには単なる“修理”にとどまらず、「祈りの空間」として次の百年を見据えた再生の物語が広がっています。

どうぞこの機会に、復原された本堂の息づかいを、五感で感じていただけましたら幸いです。
完成後の特別拝観も企画しております。ぜひ、未来へと受け継がれる祈りの空間に、直接お立ち合いいただければと思います。

コメント