晋山・落慶のご報告 ― 御礼かたがた
緑雨の季節となりました。 境内の木々は若葉の瑞々しさをすっかり深緑へと塗り替え、蝉の声が聞こえてくるのも、もうまもなくのことかと思われる昨今でございます。
令和八年五月十六日に執り行われました本堂落慶式並びに晋山式より、はや三週余りが過ぎてまいりました。 式後も片付けにお礼参りや各所へのご挨拶廻りが続き、修理現場の過渡期とあって引越し作業など日々を追われるように過ごしておりましたが、ようやくそれらも一段落し、いつもの法務・観光対応の穏やかな日常が戻ってまいりました。
ご報告が遅れましたことを、まずもってお詫び申し上げます。 しかしながら、時間が経ったからこそ、喧騒の中では気づけなかった皆様への感謝の深さを、改めてしみじみと胸に感じております。 ここに筆を執りましたのも、その思いを少しでもお伝えしたい一心からでございます。
あの晴れ渡った五月の朝のことは、住職となった身に、これからもずっと刻まれ続けることでしょう。 改めて、心よりの謝意を込めて、あの日のご報告を記させていただきます。
父の背中が、私をここへ連れてきてくれた
手前味噌みたいでお恥ずかしい話ですが、この日を迎えるにあたり、何より先に思いを馳せずにはいられない方がおります。先代住職であり、師であり私の父——友峰和尚のことです。
幼い頃から見上げてきた父の姿は、常に寺とともにありました。禅僧として大安禅寺のみならず人生と向き合うその眼差し、何十年にもわたってこの山を護り続けてきた揺るぎない背中、それらすべてが、気づけば私の骨肉となっていました。
住職の道を歩もうと心を定めたのも、結局のところ、父の生き様そのものに導かれてのことであったと、今はっきりと感じております。
本堂落慶という大きな節目に、晋山式という形でその法灯を受け継ぐことができましたのは、父が長年にわたり檀信徒様とともに護り育ててきたこの大安禅寺があればこそです。先ずは、本当にお疲れ様でしたと伝えたいです。
息子・永峰とともに三人で式に臨めたことは一番の親孝行のようにも思えます。


安下所より、旅立ちの朝
当日の空は、これ以上ないほどの快晴でした。雲ひとつない青に、初夏の光が惜しみなく降り注ぎ、天もこの日を祝ってくださっているかのようでした。
式当日の安下所は、責任役員総代を務めてくださっております藤田総代様のご自宅でした。藤田様は私にとってまさに「心の支柱」と申すべき方であり、そのご自宅は細やかなお心遣いの行き届いた準備で私をお迎えくださいました。
着替えを整え茶礼後に読経して出発の時を迎えると、ご子息の亮一様が温かくご挨拶くださり、立派になったお孫さん方もそろってお見送りくださいました。
ご家族総出でこの日を祝ってくださるそのお姿に、固くなっていた緊張がほぐれ、晴れやかな気持ちでお寺へと歩み出すことができました。藤田家の皆様の温かさは、この朝の大切な贈り物でございました。









息子との一枚 山門にて
稚児行列——本堂へと続く、一歩一歩
稚児行列に先導され、修行道場での辛苦をともに分かち合った先輩・同期の僧侶方に導かれながら、落慶なった本堂へと一歩一歩近づいてまいりました。胸中には高ぶる感慨がありながらも、歩を進めるごとに、これからの大安禅寺を担うという決意がしずかに、しかし確かに固まっていくのを感じておりました。晴れがましさと重責とが、あの道中の私のなかで静かに交差しておりました。







総勢三百名を超える落慶晋山式へのご臨席
式には、妙心寺派管長・霧隠軒老大師猊下をはじめ、道雲窟老大師、龍雲寺閑栖老師、また僧堂では先輩であり様々にお心配りを下った天眞窟老大師など、全国より約百名の諸大徳・ご尊宿方がご随喜・御出頭・御荷担くださいました。
あわせて、越前松平家ご当主松平宗紀様をはじめ、滝波議員、福井石田知事、福井西行市長ご来賓各位、そして大安禅寺とご縁深き檀信徒の皆様——総勢三百名を超えるご臨席のもと、落慶晋山式はつつがなく執り行われました。

























皆様が遠路はるばるこの福井の地へとお集まりくださったことを思うたびに、胸が熱くなります。この日は皆様の法愛と祈りが、大安禅寺の空気そのものを満たしてくださっていたように感じられました。
「感謝」の二文字に、すべて帰す。
本堂の修理はいまだ完遂に向けて歩みの途上にあります。その道のりを全うするためにも、皆様のご支援とご指導が何にも増して不可欠であることを、この身に深く刻んでおります。
歴代の祖師方はもちろんのこと、先々代實道和尚、先代友峰和尚が護り続けたこの大安禅寺を、今度は私が次の世代へと確かに手渡していく
その覚悟を胸に、重責に負けぬ気持ちで前へ進んでまいります。
振り返れば、この日のすべては「感謝」の二文字に帰します。
お集まりくださった皆様おひとりおひとりの温かいお心が大安禅寺を支えて下さり今があります。
今後ともどうか変わらぬご指導とご法愛を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
大安禅寺
第二十一世住職 髙橋 玄峰
令和八年六月 謹識




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